一般的に相続対策(エステートプラン)と言いますと、遺言書があればよいと思っていらっしゃる方も多いですが、カリフォルニア州をはじめ、アメリカのほとんどの州では、遺言書だけではプロベートを避けることはできません。テレビドラマや映画で、富豪が亡くなった後、弁護士が相続人を集めて、故人の遺言書の内容を言い渡す、というようなシーンがありますが、アメリカでは、遺産が州の規定による一定額を超える場合、いくら遺言書があっても、裁判所がその遺言書を鑑定する「プロベート」という手続きを経なければなりません。
カリフォルニア州の場合、プロベートは、故人の総資産が10万ドル以上あった場合に必要になりますが、これは純資産でなく総資産です。つまり、資産が20万ドル、借金が20万ドルでも、プロベートになります。また、遺言書はその信憑性を問題にして争いが起こることも多いですが、リビングトラストは、そういった可能性は低いといえます。
また、エステートプランと言いますと、高齢になってから考えればいいものと思いがちですが、必ずしもそうではありまえん。たとえば、若い夫婦に万が一のことが起こった場合、遺された幼い子供の養育について決めておく必要があります。また、万が一の事故や予期せぬ病気で、自分が正常の判断ができない状態になった時、治療やお金の出し入れについて、誰に決断を委ねるか、もし植物状態になった時は、どのように扱ってほしいか、などを決めておくことで、家族に与えるストレスを最小限にできます。
(これについては医療委任状のページもごらんください)
私の身近で起きた例をひとつご紹介しましょう。私の親しい友人の祖父母でした。2人は引退するまで生涯働いて、着実に投資をして資産を増やし、経済的には楽な老後を送れるはずの夫婦でしたが、相次いで認知症の症状が出て、そのうちに、食事の世話、入浴、トイレなどの日常のことができなくなりました。そのため、最初は介護の世話をする人に自宅に来てもらっていましたが、症状が悪化し、ついには、24時間看護のナーシングホームへ入居せざる終えなくなりました。自宅介護、ナーシングホームの費用とも、メディケア(米国の高齢者用社会保険)や民間の医療保険ではほとんどカバーされませんので、この長期間の介護費用で老後の蓄えはなくなり、低所得者用のMedi-Calを利用するしかありませんでした。Medi-Calで利用できる施設は非常に限られています。また、Medi-Calを利用するには、貯金、生命保険、その他の財産をほとんど家族に遺すことはできません。祖父が先に亡くなり、次に祖母が亡くなる間際、彼女は孫の前で泣きながら、遺産を何も遺せないことを悔やみながら、孫に謝りながら逝ったそうです。孫である私の友人は、そのときまだ10代で、祖父母からの遺産相続を期待していたわけではありませんが、祖父母のほうにしてみれば、さぞかし悲しかったことだろうと思います。人間だれでも、最期に逝くときになって、自分の人生の悲運を悔やみたくはありませんし、一生働いて築いた財産は、愛する者に遺したいはずです。
エステートプランがなかったための悲劇は、私の周りにいくつもあります。明日何が起きるか、誰にもわかりません。皆さんも、1度考えてみてください。